観光は学問としては浅い歴史で,数字的な裏付けが少なく,数字も取りにくい。データ数字の計算方法が様々であり,例えば日本が目標としている外国人観光客数の数字にはビジネスや留学目的の数字も含まれる入国者数であったりする。旅行者の行動の中に観光の意志が確認できないから「観光」という数字はハッキリしないので「みなし数字」や「推定値」でデータにしている現実があることを念頭に置いてもらいたい。観光学は心の要素が含む心の学問であることを理解してもらいたい。
観光は地域のすぐれたもの,美しいものを心を込めて観(見)かつ誇りを持って観(示)ことによって人的交流図ることを意味する。人口の減少するなか,交流人口を増やしていけば地域の活性化につながる。交流を増やしていくことは文化活動であり,観光行動により観光関連産業が発展し,地域経済の活性化にもなる。観光は新しいまちづくりができ,国づくりに発展でき、更に人が集まってくると言う循環ができる。この循環を生み出そうとするのが観光立国である。
在来型の観光は,自然景観や歴史文化を観光資源としていたが,新しい観光ではテーマ別の総合観光や行動型ニューツーリズムが注目され新しい観光資源として見いだしている。産業観光は歴史的文化的価値のある産業文化財,生産現場,産業製品を観光資源とする観光であり,国内観光の低迷からの脱却や観光形態の変化や観光ニーズへの対応,外客誘致の国際観光への対応のために必要である。訪日外国人の訪日動機の上位は体験や産業観光関連などが占めていることから産業観光の需要はあり,日本人が喜ぶものでが外国人が喜ぶわけで無いことや,国によって求められる産業が異なることなどを念頭に置いて置かなければならない。産業観光資源の分野には歴史的産業文化財遺産・近代化産業文化財遺産・現在稼働中の生産現場や体験などに体系できる。観光には「何も無い」非日常も観光となるつまり何でも観光となる可能性がある。
産業観光の特徴は,地域と住民の暮らしに密着した観光であるため,地域と観光客のコミュニケーションが図られ真の交流が実現できること,着地型の観光なので地域の意志が反映した形での観光展開ができること,「見る」「学ぶ」「体験する」の三位一体の観光となる特徴を持つこと,まちづくりにつながる観光であることがあげられる。産業観光の展開の前提には,企業・住民・行政の理解と協力や受入体制の整備,まちづくりとの協働が必要である。幅広い人を受け入れるには,企業と住民・地域の幅広い理解と協力やガイド・指導者などの人材育成が必要で企業・行政の協力が求められる。産業観光とまちづくりは表裏一体であり,まちづくりは産業観光の発展の前提ともなる。
産業観光は立地や形態により分類されるが各分野のネットワークを組み繋ぐことや、情報を着地型でどのように発信するのかが必要である。これからの日本の観光で大事なことは,国際観光と広域観光の2つである。日本の国際観光は遅れており,入国審査やビザ発給、宿泊代金の高さや言語の問題など改善の必要がある。広域観光でも市町村別だけでなく周辺広域で観光を捉える課題がある、産業観光は日本の観光の凝縮であり,日本の抱えている観光課題を産業観光から解決する姿勢で進めていかなければならない。暮らしの中で残せるもの・伝えるものが産業観光資源となるかもしれない。皆さんそれぞれが産業観光をするという気持ちで勉強していって欲しい。
「今後産業観光をのばすために必要なものは?」
「地元の人が観光する人の立場にたち,何を望むのかを考えれば観光資源になるものに気が付く。
よそ者目線で地元の産業をみることも必要」
「有名ではない企業の産業観光の情報はどうやって広めるのか」
「着地型しかない。地元しか知らない情報は地域・地元の人が伝えるしかない。
知る人ぞ知る観光資源として地元から発信しなければならない」
「産業観光に対する客観的な意見を取り入れる方法は?」
「来た人から意見をヒアリングするのが一番。観光客と見せる側との対話が必要でコミュニケーションが無ければ観光が文化とならない。産業観光はフィードバッグさせることが必要である。意見をフィードバックさせ,新しい見せ方をし,コミュニケーションの取り方に工夫することが重要となる」
「『観光する心』が重要。観光客が観光のルールを守り敬虔な気持ちで心を込めて学ぶという気持ちで観光してほしい。観光客を受け入れる側はおもてなしの心が大切で地域を理解してもらえる説明や情報をことが必要同じ心を持っていれば必然的に繋がりができ文化が生まれる。観光地で会話があれば意味のある観光になる。産業観光は対話を誘発する・コミュニケーションを生む意義のある観光である」と学生へ伝え講義が終了した。